Statue #5
~スタチュー(人間彫刻)パフォーマンスとは?~

「人間彫刻」パフォーマンスについてのエッセイ。
 今回は、白リーマンのスタチューで心がけている2つのこと

#1:白リーマンの場合。
#2:いままで、こんなことを。
#3:「静止」と「停止」のちがい。
#4:中村勘三郎さんとの出会い。
#5:スタチューの演技:「じらし」と「ガマン」。

(今後の掲載予定)
#6:スタチューの演技:演技の「引き出し」

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スタチューの演技: 「じらし」と「ガマン」。


先日、あるスタチューパフォーマンスを拝見しました。
そこは屋内の吹き抜け空間で、ぼくはこれ幸いと、上の階から見下ろすように観ました。・・・しかも背後の角度から(スミマセン)。

ただそのおかげで、狙っていた通りぼく自身の身体感覚に置き換えて、パフォーマンスを味わうことが出来ました。
自分がパフォーマンス中に見ているときの風景に、近付いていますからね。

その結果、その方が持っていてぼくには無い引き出し、逆にぼくが持っていてその方は持っていない引き出しの両方が分かりました。
「引き出し」とは、パフォーマンスを展開するための戦術=手口の数々ですね。

これから書くことは、ぼくが持っている引き出しのなかで、とても重要な(その時に改めて認識した)モノについてです。

それが、
「じらし」と
「ガマン」です。

実は、もうこの2つだけだと極論してもいいのですが。
お客さんをじらすこと。
自分はとってもガマンすること。


具体的な状況(ぼくが最も遭遇したパターン)を例に、説明してみます。
スタチューのぼくが、下げた両腕のひじを90度曲げて、「カーネルおじさん」と同じポーズでお立ち台に立っているとします。
ちなみにぼくのお立ち台はスタンダードで42cm、ぼくの身長は170cmです。

(スタンダードと言ったのは、ぼくは状況に合わせて3パターンの高さのお立ち台を使い分けるからです。その事については、次回以降に書きます)。

この高さですと、屋外空間では半径2メートル以内に人が入って来る事はありません。
むしろ考える(感じる)べきなのは、寄ってきたお客さんの視界です。

「おいおい、なんだアレ!」
という声がぼくから見て右手方向からかかってきたとします。
(6割くらいが、この45度右側パターンです。面白いですね)。
2-3人の通行人の方としましょう。

まずは、この最初の方々を、1分でも長く足止めしたいのです。
ぼくは、スタチューパフォーマンスといえど、上手くやればショウパフォーマンスに負けないくらい集客の輪が出来るハズだと思っていました。
(実際、出来ました)。
ただ、そのためには最初のお客さんをなるべく長く「じらす」ことが必須です。

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「おいおい、ヒトか?」
「ちげーよ、モノだよ」
「ホンモノ、ニセモノ?」

うーむ、ホンモノ&ニセモノってなんでしょう、、。(いまだに分かりません)
まぁひとしきり盛り上がったタイミングを見計らって、ぼくはちょっとだけ動くのですが、それは「手」だけにしたい。
(手というのは、無言のパフォーマンスでは最も重要なパーツです)。
片手がピクッと動くだけでいいのです。

さあ。
それは、右手でしょうか。
それとも、左手でしょうか。

・・・ぼくは、100%左手です。
なぜなら、ぼくを見ている方々は、右手側にいるのです。
あえて死角にもなりがちな、奥にある左手が少しだけ動けば、
「動いたよ!手!」
「え、どこ?」
「左手!」
見損なった方も必ずいるので、また盛り上がります。
そう、じらすのです。


見えにくい身体のパーツを、ちょっとだけ動かす。
これだけです。
しかし、これが見ている方々には大きなフックになり、ミステリアスさは失われません。
そう、スタチューからお客さんが離れていくのは、ミステリアスを失った時なのです。
これを失わない努力が、スタチューパフォーマンスを、ショウにつなげてくれます。
しかし、この状況にいくまでは、簡単に個々のお客さんを満足させてはいけません。
どうしてもパフォーマーですから、自分と直接絡んでいるお客さんの笑顔を引き出したくなります。

ぼくは、それをぐっとガマンします。
白リーマンが、ベタな笑顔を乱発しないのは、そういう理由です。
そのかわり、鍛え抜いた(?)ニッチなポーリッシュマイムの技術で、上品な空気を作りたいなぁと努力はしています。

これも次回以降に書きたいと思いますが、ぼくはスタチューの技術でウォーキングアクト以上に必要なのは、「フェードアウト」で止まれる技術だと思っています。
すーーーーーっっと、いつの間にか動きが止まっている(音楽のそれですね)、技術です。
フェードアウトは、上品でミステリアスな空気を作れる、最高の技術です。

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難しいんですけどね、これは。
パントマイムをちゃんと修得した方、もしくは舞踏かバレエをやっている方で無ければ出来ない動きなのですが。

ただ、ベタな「バイバイ」よりは全然こちらのほうが効果的です。
手を振る「バイバイ」をすると、とてもわかりやすくコミュニケーションが成立するのですが、同時に終わってもしまいます。
終わるということは、お客さんもいなくなるということ。

常に心に引っかかる何かを、残し続ける。
それが、お客さんを離さず、大きな輪を作る。
そのために必要なのは、「じらし」。
そして、安易なウケに自分が行かない「ガマン」!

大変だ、まったく。
全くなんでこんなことを。。。

次回は演技の引き出し(引き出しの掛け算)について書きたいと、思います¥

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